NEWS 093 : 新年のご挨拶
みなさん、あけましておめでとうございます。
平成21年の元旦にあたり、謹んで新年のご挨拶を申し上げますと共に、本年の抱負を述べさせていただきます。
平成16年から始まった海運市況の盛況は、バルカーに先導されるかたちで昨年前半にそのピークを迎えましたが、アメリカのサブプライムローン破綻に端を発する世界同時大不況によって、海運界も冷や水を浴びせかけられるようなかたちで、一気に収縮してしまいました。バルカーのみならず、私どもが過去建造してきたコンテナ船や建造が始まったばかりの自動車運搬船といったマーケットも大きく下落してしまいました。色々原因は後付けのかたちで考えられますが、要は比較的変動幅がボラティリティーの大きい海運マーケットが、本来の姿であった「山の後には谷がくる」という不変の法則通りに動いたということに尽きるのではないかと考えます。
さて、弊社も昨年(平成20年1月~12月)は、コンテナ運搬船2隻、LPG運搬船1隻、RO/RO 運搬船 4隻の計 7隻を契約調印完了し、引渡ベースで平成24 (2012)年6月までの受注を確保いたしました。約 3年半18隻の連続建造受注残を確定するにいたったわけですが、間に未確定船も無くこれだけ長期の線表を確定できましたことは、旭洋造船の 66年の歴史で初めてのことであり、これもひとえにご発注いただきましたお客様のお陰であると、深く感謝いたしております。
ただ、これら新規受注もすべて昨年前半に行われたものであり、海運市況が急落した後半はほとんどすべての引き合いは地合の悪さのために中断ないしは延期されたのが実情であります。韓国や中国の経営基盤の弱い新興造船所が倒産もしくは事業中止に追い込まれており、この状態がこれからも続くことになりますと、我が国の海運業界造船業界にとって良い面悪い面、様々な影響が出てくると思われます。一瞬たりとも油断のできない状況であります。
一方今年の建造計画は、コンテナ運搬船1隻、多目的貨物船2隻、自動車運搬船2隻の計5隻を予定しております。久々の自動車運搬船建造がいよいよ始まりますが、事前準備を怠らず気を引き締めて対応してゆきます。
こうした激変する環境のもと、私どもは、同クラス造船所が対応しづらい案件、つまり「難しいが、チャレンジし甲斐もある高付加価値船の建造」を志向してゆくとの考えを維持してゆくこと、つまり技術面での差別化を推し進めることこそが、生き残りのための唯一の方策を今まさに再確認しております。加えて、安易に増産に走ることなく、あくまで作業能率アップ、省力化が確実に期待できる設備、著しく老朽化の進んだものに対してのみ最小限の更新ないし設備投資をしてゆくという方針も当然のことながら維持し、より安定した財務内容およびキャッシュフロー重視の経営を目指します。
一昨年、社長就任の年から、改善提案制度の導入、社員全員との面談、執行役員制度の導入などなど、これまで足りなかったと思われる様々な試みを行いましたが、奇しくも下半期は海運マーケットの崩壊による厳しい状況を迎えることになり、10月1日に「未来に向けて、再チャレンジ2010」というスローガンを発表しました。来年 2010年には設計力、品質力、価格競争力、財務力、ワンチーム力の5つが揃った造船所として確実な地位を築けるよう、全員で様々な改革、チャレンジをしてゆくことを目的としています。
以上の基本方針のもと、旭洋造船は今年さらにもう1年、将来のサバイバルに向けた基礎作りのための年と位置付け、そのための方策を行います。
- まず受注船ですが、新ルール施工に基づき、より環境・省エネに重点を置いた新船型のコンテナ運搬船および自動車運搬船を開発する予定です。加えて、真の意味でのマルチ・パーパスな貨物船の計画にも積極的に取り組み、一方であわてることなく実直に受注に結び付けたいと思っております。
- また生産管理面においては、適材適所の組織作りや若手の積極的登用、改善提案制度の確立、商品市況を見据えた計画的で大胆な購買を実行することにより、確実な工程管理とコスト競争力維持を図ります。特に、昨年後半全社ベースで検討をしてきました、造船工程管理のキーとなるブロック組立工場の大改革を3月には完了させ、自動車運搬船という新しい船型のスムーズな建造を徹底的に追求してゆきます。
そして、何よりも従業員一人一人が、建造させていただくチャンスをいただいた様々な関係者の方々への感謝の気持ちをかみしめつつ、地域のため、会社のため、そして自分のために、今の時代への危機意識を共有しながらも夢と誇りと活力をもって、安全第一に「船づくり」をおこなってゆきます。
今後とも、一層のご愛顧とご鞭撻をお願い申し上げます。
代表取締役社長
越智勝彦
[2009/01/01]