NEWS 144 : 謹賀新年 - 2012
2012年の元旦にあたり、謹んで新年のご挨拶を申し上げますと共に、本年の抱負を述べさせていただきます。
昨年3月11日の戦後わが国最大の天災となった東北大震災、そしてそれに伴う福島原発メルトダウンによる放射能汚染は、わが日本という国の地理的な脆弱さと政府の危機管理能力の欠如を世界中に露呈してしまいました。加えて、ギリシャの財政破たんに端を発した欧州金融危機の影響で日本のみならずアジア地域全体の経済も大きく落ち込んだ状態が続いています。
我々造船業のベースである海運業にあっても、世界的な荷動きの低下からほとんどの種類の船において運賃の低迷が続くという厳しい経営環境となっており、それに伴って船舶発注量の激減、用船料の下げに伴う船価の下落、70円台が長期化している円高、船舶建造資金の融資取得の難化など、造船界にとりましては三、四重苦を味わう一年となりました。
このような厳しい環境にさらされた昨年一年でありましたが、弊社は契約予定納期通りに全ての建造船を無事にお引き渡しすることができ、また一方で4隻の新規受注を獲得することができました。修繕部門におきましても、多くのお客様にご愛顧いただきました。これもひとえにご発注いただきました船主様を始め、商談を仲介いただきました商社様やブローカー様などなど関係各社のご厚情とご努力の賜と、改めまして感謝の気持ちを表させていただきたいと存じます。
さて、昨年以上の厳しさを覚悟しなければならない今年の始まりに当たりまして、私ども旭洋造船の受注戦略は、第一に、「旭洋造船が同クラス造船所をこれまで圧倒してきた外国船主向けの少ロットで高付加価値な船をオーダーメイドで受注する方針を継続していくこと」であり、第二に、「外航船舶のみならず内航セメント船の受注を新たに再開すること」であります。共に技術力を要求される厳しい方向性ではありますが、設計部、工作部一体となって「チャレンジ精神」を合言葉に対処してゆく所存であります。
次に今年の大きな目標としまして、長期化する円高に対処するための最良唯一の手段としての「建造コストのドル化」にすべてを優先して取り組みます。そのために国内外より資材部購買調達担当として人材を補強し、韓国や中国を中心としたアジア全域を資機材の調達エリアとしてとらえ、積極的な購買を展開します。
設計部門と工作部門におきましては、日本では他社に先駆けて一昨年導入した3D造船設計システム「AVEVA」への早期完全移行に目途をつけること、そして昨年から採用しているブロック製作工程管理(BMF)の精度を上げ完成の領域にもってゆくと共に、今年はドックでの外業工程管理(EMF)の導入を開始いたします。
さて、昨年を振り返ってみますと、旭洋造船にとりまして大きな出来事がありました。「2010日本シップオブザイヤー」大賞受賞であります。もちろん受賞は創立以来初めてのことであり、旭洋造船の魂「チャレンジ精神」が結実した記念すべき褒賞であります。中小企業の我々にとりまして大きな励みとなる賞を授与くださったシップオブザイヤー選考委員や事務局の皆様方に全社員を代表しまして感謝の気持ちを表しますと共に、エアロダイナミクスによる省エネ船型というアイデアを具現化した設計スタッフ、そして球状船首という類を見ない難解な形状の船を実際に作り上げた工作部スタッフは、旭洋造船の宝であり誇りです。そして今後も省エネ船の設計建造を積極的に進めてゆく所存であります。
本年も気持ちを新たに、社員一人一人が、建造させていただくチャンスをいただいた様々な関係者の方々への感謝の気持ちをかみしめつつ、地域のため、会社のため、そして自分と家族のために、夢と誇りと活力をもって、安全第一に「船づくり」をおこなってゆきます。今後とも、一層のご愛顧とご鞭撻をお願い申し上げます。
旭洋造船株式会社
代表取締役社長
越智勝彦