NEWS 221 : 新年明けましておめでとうございます
年頭にあたり、謹んで新年のご挨拶を申し上げますと共に、本年の抱負を述べさせていただきます。
昨年、世界では英国のEU離脱決定、米国大統領選挙におけるトランプ候補の当選など、結果が事前の予想を覆す大きな出来事がありました。経済社会のグローバリズムにより欧米諸国内に惹き起こされた貧富の差の拡大に、特に危機を募らせた自国の「ぶ厚い中間層」と言われる人々が、これまでの潮流にNO!の意思を示した年であったと言えるかも知れません。今年、これら国民の審判が各国の国民投票ひいては世界経済にどのような影響を与えるか注目するところです。
さて、海運界は依然として歴史的と言われる不況が続いています。 海運大手は次々と運航アライアンスや M&A で事業再編を推し進め、生き残りに懸命であります。今年後半から需給も締まり調整局面から徐々に回復するとの見方がある一方で、世界経済の拡大に伴って海上荷動きが旺盛にならない限り本格的な回復は望めないという声もあり、景気に薄日が射し始める時期をはっきりと見通すことができません。
造船業界では、一部の造船所で客船やRO/RO船などニッチな船種での受注を伸ばした以外、他の多くの造船所は、貨物船の受注件数が極端に減り、数少ない新規案件の価格交渉でも厳しい判断を余儀なくされ、工場ではそれなりの操業を維持してはいるものの、発注の復調が感じられない極めて厳しい経営環境に置かれています。 日本の造船業界にとりましても、昨年末からの円安は採算面での追い風ではあるとは言え、海運市況の回復なくして解決できるほどの要因でなく、今年からいよいよ正念場を迎えることとなりそうです。
このような状況の下、弊社は、新造船部門におきまして、昨年5隻の船を予定通り建造、引き渡しすることができました。 内訳は海外船主から発注頂いたLPGのシリーズ船で、7,200m3LPG船を1隻、11,000m3LPG船を3隻、そして、半球状船首(SSSバウ)を採用したセメント運搬船1隻での計5隻であります。特にセメント運搬船では内航専用船ならではの高い品質が求められたこともあって建造には苦労しましたが、どの船も船主様やクラスの皆様の暖かいご支援とご協力の下で、無事に引き渡せたものと感謝しております。
受注面では、LPG 船や久しぶりの冷凍運搬船を受注いたしました。今年も引き続き、数隻の冷凍運搬船案件やLPG船の最終交渉を行っており、マーケットは依然厳しいですが当社の特徴であるニッチな分野での特殊仕様の船の受注を目指し開拓してまいります。
また、一昨年末に引き渡し、2015シップオブザイヤー(小型船部門)を獲得した当社が特許を有する半球型船首(SSSバウ)を採用いただいた内航コンテナ船「なとり」につきましては、その省エネ性能を昨年一年かけてデータ収集し検証しました結果、概ね計画通りの省エネ性能を発揮していることが立証できました。更に省エネ性能に磨きをかけた第2船目の受注につなげるべく受注活動に邁進いたします。
また、もうひとつの営業主力である修繕部門におきましても、引き続き多くの国内のお客様にご愛顧いただきまして、厳しい環境の中、売上金額は前年並みを維持することができました。
今年の最重点項目は、厳しい環境の下で、やはり受注を着実に積み重ねるということであります。今年前半で2020年度を埋める計画であります。 その為には、まずは早急にNOx 三次規制とSOx 規制に対応した船型開発を済ませ、お客様にご満足頂ける提案をしたいと考えています。
昨年4月、東京で開かれました Sea Japan 2016で当社は「挑戦者に学ぶ」を基調とした講演の機会を得ました。そのプレゼンにおける私たちのメインメッセージは「中小造船業界の技術トップランナーを目指して」でありました。その宣言に相応しく、旭洋造船の持つ4つの力、「営業力、設計力、工作力、財務力」にさらに磨きをかけながら、今年も他社に先駆け、高性能な船を開発して一歩先行く当社の姿を示したいと考えております。
次に、コスト競争力をより一層強化することであります。 海運マーケットに見合った船価での船の提供は、造船会社の使命でもあり、希求する永遠のテーマです。資材部門を中心に社内すべてのセクションにおいて、より一層仕事の生産性を高め無駄の根を取り除いて参ります。
結びといたしまして、今旭洋造船がこうして健全に営ませていただけるのも、ひとえにご発注いただきました船主様を始め、商談を仲介いただきました商社様やブローカー様などなど関係各社のご厚情とご努力の賜と、改めまして感謝の気持ちを表させていただきたいと存じます。
若々しい声のあふれる活気のある職場を常に標榜し、協力会社を含めた全社員が「チーム旭洋」としてワンチームの一体感を感じながら、将来に向けエンジニアリング能力に長けた設計布陣をもつ小粒でもピリッと辛い造船所を目指してまいります。
本年も気持ちを新たに、私たち一同は、建造、修繕させていただくチャンスをいただいたお客様や様々な関係者の方々への感謝の気持ちをかみしめつつ、地域のため、会社のため、そして自分自身と家族のために、夢と希望と活力をもって、安全第一に「船づくり」をおこなってゆきます。今後とも、一層のご愛顧とご鞭撻をお願い申し上げます。
旭洋造船株式会社
代表取締役社長
越智勝彦
[2017/01/01]