NEWS 203 : 2016年年頭にあたり
年頭にあたり、謹んで新年のご挨拶を申し上げますと共に、本年の抱負を述べさせていただきます。
昨年、1ドル120円をはさむ安定した動きの為替環境は、引き続き好調な自動車や機械などの輸出産業に加え、インバウンド消費に支えられた小売や観光などの関連業界にも恩恵をもたらすこととなりました。 一方、本来は稀に見る原油安により運航コストの圧縮メリットを享受するはずの海運界にあって、特に中国経済の減速により史上最低水準まで用船料が落ち込んだばら積み貨物船(バルカー)マーケットにおいては、国内外の中大手バルクオペレーターの経営破たんや経営悪化が相次ぎました。 造船業界では、今年1月から始まる窒素酸化物(NOx)排出規制適用を控えた駆け込み需要で手持ち工事量は積み上がりましたが、バルカーの需要が大きく落ち込んだことから、造船会社によっては、既契約船において納期の遅延や船種の変更など様々な厳しい対応を迫られています。
このような状況の下、弊社は、新造船部門におきまして、2015年も全ての建造船を予定通り建造、引き渡しすることができました。 そして昨年、特筆すべきことが3つありました。
第一は、加圧式LPG 船としては弊社の最大サイズである11,000m3型の建造引渡が無事に行えたことであります。 幅広船型であるにも拘わらず、本船の直進航行性能は実際の海上試運転においても計画段階での予測性能以上の結果が証明されました。 来年にかけて同型船計7隻の引き渡しと新規の受注活動を自信を持って推し進めることができます。
次に、弊社がほぼ全世界で特許を有している半球状船首(SSSバウ)を採用いただいた上で、様々な省エネ技術を盛り込んだ内航では最大のコンテナ運搬船の引き渡しが昨年12月に行われました。 今年の春にかけその省エネ性を弊社技術スタッフも乗船しながら検証していきます。
そして最後に、新造船の受注面において、世界的なガス運搬量増加による需要を見越したLPG船、また弊社が建造を得意とする冷凍運搬船やフィーダーコンテナ船など多くを受注することができたことであります。引き渡しベースで2019年まで受注量を伸ばすことができました。
また、もうひとつの営業主力である修繕部門におきましても、引き続き多くの国内のお客様にご愛顧いただきまして、売上金額は前年を上回ることができました。
ひとえにご発注いただきました船主様を始め、商談を仲介いただきました商社様やブローカー様などなど関係各社のご厚情とご努力の賜と、改めまして感謝の気持ちを表させていただきたいと存じます。
さて、昨年は比較的順調であった業績や受注活動の一方で、私自身、社長として社内のリスクマネジメントの観点において深く反省し将来に向けて改善していかなければならないことを強く認識させられた年でもありました。
まずは、工場の安全管理です。 製造業にとってすべてを優先して確保すべきことは、社員そして共に働く協力会社員の安全であることを、改めて強く認識いたしました。 弊社は平均年齢が非常に若い活気あふれる会社でありますが、反面、経験の少なさが故に惹き起こす取り返しのつかない事態が起こる可能性も高いことを肝に命じ、健全な職場環境の提供とその向上に努め、併せて、作業する全員には安全規則や作業マニュアルの遵守徹底を求めることにより、より安全で清潔な職場を目指します。
もうひとつは、これからも増々増え続ける、高齢な社員や協力関係者への対策です。 彼ら高齢者の持つ技術・技能は高度で熟練されたものだけに、中堅若手の社員は彼らに頼り切り、時に彼らの誤りに正面切って異を唱えることを躊躇してしまいがちです。 そして今、各職場において、その悪影響が顕在化しています。 いつまでもベテラン社員には頼れないことを組織全員で認識し、ややもすれば属人的で閉鎖的になりがちな彼らの技術・技能に対し、作業マニュアルの整備で手順を整理して確立しつつ、中堅や若手社員には早めの登用により経験や実績をどんどん積ませていく方針です。
さて弊社に課せられた2016年の最大のテーマは、設計開発能力の更なる向上であると考えています。
旭洋造船という造船会社がこれからも生き続け、将来に亘り光り輝けるために解決しなければならないテーマであります。とりわけ、一昨年7月より適用が開始された船舶居住区の騒音規制へ対応し、今年1月以降に起工する新造船に対して適用される厳しい NOx 排出規制を満足する船の開発は喫緊の課題です。 既に欧州船社様より問い合わせが相次いでおり関心の高さがうかがえます。 弊社は、ご満足いただける船型を提案しご期待にお応えできるよう、船型開発に経営資源を十分振り向けたいと考えています。
又、弊社の特長である「ニッチマーケットにおけるプロダクトミックスを展開する」という経営戦略の根幹は、この高い設計開発能力が担っています。 従いまして、様々な船種の小型船を小ロットで設計建造する弊社にとっては、国内外を問わないサードパーティーとの業務提携や国内舶用機器メーカー様の絶大なるご協力を得るなどで、持ち前の設計対応能力とソリューション能力を遺憾なく発揮できる設計環境を、新卒社員の獲得を含め、しっかり整え支援していかなければならないと考えています。
若々しい声のあふれる活気のある職場を常に標榜し、協力会社を含めた全社員が「チーム旭洋」としてワンチームの一体感を感じながら、先ほど申し上げました反省をしつつ、将来に向けエンジニアリング能力に長けた設計布陣をもつ小粒でもピリッと辛い造船所を目指してまいります。
本年も気持ちを新たに、私たち一同は、建造、修繕させていただくチャンスをいただいたお客様や様々な関係者の方々への感謝の気持ちをかみしめつつ、地域のため、会社のため、そして自分自身と家族のために、夢と希望と活力をもって、安全第一に「船づくり」をおこなってゆきます。今後とも、一層のご愛顧とご鞭撻をお願い申し上げます。
旭洋造船株式会社 代表取締役社長 越智勝彦
[2016/01/01]