NEWS 258 : 向かい風の中で
年頭にあたり、謹んで新年のご挨拶を申し上げますと共に、本年の抱負を述べさせていただきます。
昨年の経済は、主要各国の経済成長率が伸び悩む低温経済状態にあっても、株価指数が年初来の高値を付けるなど金融と実体経済との乖離を強く感じた一年でありました。世界経済に好循環が生まれず経済規模の拡大が展望できない中、海運各社は、いよいよ今年から適用される SOx 規制への対応が定まらないこともあり、船体の整備拡充には慎重な姿勢で臨み、貨物の収益性に重点を置いた営業姿勢にシフトし続けています。
造船業界が、こうした海運各社の新造船発注手控え傾向による少ない受注案件に各社が安値攻勢を掛けるという、極めて厳しい新造船マーケットに苛まれる中、中国では、国内第一位の中国船舶工業集団と第二位の中国船舶重工集団公司が経営統合し、韓国でも、世界第一の現代重工が同三位の大宇造船海洋の買収に向けた経営統合の手続きを開始し、そして、遂にわが国でも重工系造船会社と専業大手の造船会社との資本提携や事業譲渡の発表があったように、昨年は、造船各社が様々な垣根を越えて、厳しい新造船マーケットに耐えうる事業規模拡大を狙った動きを見せ始めた印象的な一年でした。
こうした厳しい環境の中にあって、弊社はこの一年、冷凍船1隻、LPG船4隻、コンテナ船3隻の計8隻を受注又は内定し、2022年初頭まで建造量を確保することができました。お客様より省エネ船型を高くご評価頂きリピート発注して頂いたこと、そして、先述のSOx規制へ素早く対応したことにより、お客様にご納得頂ける解決策を提案できたことが受注に繋がったものと思っています。
また昨年の建造実績としては、冷凍船3隻、コンテナ船3隻の計6隻を予定通り竣工引き渡しすることができました。もうひとつの営業主力である修繕部門におきましては、引き続き多くの国内のお客様にご愛顧いただきまして、大型改造工事も寄与し売上金額は前年を大きく上回ることができました。
ここで、2020年の私の取り組むべき抱負をふたつ述べさせて頂きます。 私には不変とも言うべき抱負であります。
ひとつは営業戦略の徹底であります。時代の変化や潜在的なニーズをいち早く捉えること、高付加価値、高性能な船型を小ロットでも開発できる設計体制を維持すること、そして、世界中どこへでも独自にお客様に提案できる営業力を活かし、徹底して世界中のニッチなマーケットでの受注を模索することであります。
もうひとつは、生き残りのための生命線である競争力の一層の強化であります。
低迷したマーケット下、ままならない資機材の調達価格変動、現業職員の高齢化など様々な問題はありますが、若手社員への権限移譲によるモチベーションアップを突破口として、設計レベルでの改善、工数削減、予算厳守を地道に徹底してまいります。
船値は海運マーケットによって大きく影響されることは造船会社の宿命であると受け止め、全社一丸となってマーケットに見合うコストに近づけなければ利益は確保できません。
これらの取り組みを今年も強力なリーダーシップを発揮し実現して参ります。
さて、新年に相応しい嬉しいニュースをふたつ、皆様にお届けいたします。
ひとつは、昨今求人難の中、今年4月に12名という近年ない数の新入社員を迎え入れることが出来ることであります。 縁あって初めて流した地元テレビCMも奏功したかも知れません。 弊社に魅力を感じ将来の夢実現に向け入社を決意して頂いた彼らに対し感謝し、今年から中小企業へも法的に求められる「働き方改革」を遵守し、ワークライフバランスを図りながら、彼らの期待に応えるよう成長を促し快適な職場環境を提供しなければと重く受け止めました。
そして次に大きなニュースとして、弊社専務取締役である三井哲夫が、第8回ものづくり大賞/内閣総理大臣賞を受賞し、1月8日総理官邸にて表彰を受けることであります。 我が国の産業・文化の発展を支え、豊かな国民生活の形成に大きく貢献してきた「ものづくり」に携わる人材のうち、特に優秀な成果をなし得た個人もしくはグループに対して内閣総理大臣が表彰するものであります。 このたび、三井の成し遂げた「風圧力低減低燃費型輸送船の開発とその実用化」が、環境負荷低減に寄与したとして高く評価されることとなりました。 長く一緒に働いている仲間として、又、不断の努力を惜しまず続ける彼の姿を見ている者として、彼がこのような栄誉に浴することを大変嬉しく思っています。
2020年、米中貿易摩擦の緩和や英国のEU離脱が見通せたことなどで経済環境好転の兆しが見え、併せて造船市況の回復を願いつつ結びといたしまして、今旭洋造船がこうして健全に営ませていただけるのも、ひとえにご発注いただきました船主様を始め、商談を仲介いただきました商社様やブローカー様などなど関係各社様のご厚情とご努力の賜と、改めまして感謝の気持ちを表させていただきたいと存じます。
若々しい声のあふれる活気のある職場を常に標榜し、協力会社を含めた全社員が「チーム旭洋」としてワンチームの一体感を感じながら、将来に向けエンジニアリング能力に長けた設計布陣をもつ小粒でもピリッと辛い造船所を目指してまいります。
本年も気持ちを新たに、私たち一同は、建造、修繕させていただくチャンスをいただいたお客様や様々な関係者の方々への感謝の気持ちをかみしめつつ、地域のため、会社のため、そして自分自身と家族のために、夢と希望と活力をもって、安全第一に「船づくり」を行ってまいります。今後とも、一層のご愛顧とご鞭撻をお願い申し上げます。
旭洋造船株式会社
代表取締役社長
越智勝彦