NEWS 302 : 81年目のスタートにあたって
国内外に戦慄と恐怖を感じる出来事が数多く起きた一方、冬季オリンピックやサッカーワールドカップ、そして日米両国のプロ野球界での若きアスリートの活躍に歓喜した昨年でありました。 新年を迎え、目まぐるしく変動する社会がより良き方向へと進み、それが若者の次代を担う力の萌芽となることを願っています。
さて、海運業界では、一昨年から業績好調なコンテナ船は沈静化し、代わってタンカーの業績が急回復するなど、業績は船種により濃淡があるなか、全般的には新造船の発注意欲は減退しています。円安や鋼材価格上昇の鈍化で受注環境が整いつつある造船業界では、やや不安の残るところであります。
このような状況の中で、昨年の弊社は、新造船部門におきまして、7隻の船を建造し予定通り引き渡すことが出来ました。内訳は、205,000ft3冷凍船2隻、9,100m3セミレフ方式LPG船1隻、670 TEUコンテナ船1隻、7,500m2LPG船1隻、5,500トン積みセメント船1隻、1,096TEUコンテナ船1隻と、正に弊社の多品種建造能力を遺憾なく発揮した年でした。
受注面では、合計5隻を受注することができました。内訳は 電気推進捕鯨母船1隻、1,096TEUコンテナ船4隻です。とりわけ捕鯨母船の受注は、日本の伝統的食文化の維持と下関市の地域産業発展に資するものとして耳目を集める出来事となりましたが、高付加価な船舶の建造に挑戦してきた弊社の設計力と建造力が受注に結びついたものと感じています。
また、もう一つの主力事業であります修繕部門は、引き続き多くの企業からご愛顧いただき、安定した工事量を確保し、堅調に推移しております。
ここで、今年の私の取り組むべき抱負を述べさせて頂きます。
まずは恒久的なテーマでもあります購買力の強化です。 製造原価の6割強を占める資機材費が値上がり基調にある中、その価格上昇を少しでも抑制できるよう、設計を始め全社で購買部門をサポートできる体制を整え、併せて建造工程に直結する納期管理につきましても注力して参ります。
今期の課題として一点目は、新規設計船の受注です。従来型の省エネ船では更なる省エネ性能を上げた船型の開発を続け、次世代型の環境船開発ではLPGとメタノールを燃料とする船に絞り込み、関連メーカー様と共同で開発を進め、その成果を国内外のお客様へ訴求して参ります。
二点目は全産業にも通じることですが人材確保です。 特に直接建造に関わる現業部門の人材不足は深刻で、弊社のみならず協力会社の社員数も減少し請け負える工事量が減ってきています。 労働時間の管理が厳しく求められる中で建造量を上げていくには、一人ひとりの生産性を上げていくしかありません。 人材教育や作業環境改善、或いは省人化への設備投資を通じて生産性を向上すると共に、これに協力して頂いた方々が生活面で豊かになっていくという好循環を実現し人材の確保へと広げて参ります。
ここで弊社のグループ企業についてもお伝えいたします。
弊社の親会社であるストレイツホールディングス株式会社の下には、弊社の他に、海事関連事業への投資を担うストレイツインベストメント株式会社と非マリン関連事業への投資を担うストレイツキャピタル株式会社の2社があります。
昨年より、ストレイツインベストメント株式会社では、海外子会社からのキャピタルゲインが定着化し、また、ストレイツキャピタル株式会社では、出資先企業への経営指導が功奏し、順調に企業価値が向上しているところであります。 この2社によるグループへの貢献も、弊社の目指す「100年企業」へ繋がっていくものと、引き続き強力に推し進めて参ります。
旭洋造船は、若々しい声のあふれる活気のある職場を常に標榜し、協力会社を含めた全社員が「チーム旭洋」としてワンチームの一体感を感じながら、社員を家族として考え、彼らの夢や目標をサポートしていきながら、生きがい、やりがいが持てる組織を目指しております。
昨年12月、厚生労働大臣より弊社は障害者雇用の促進および雇用の安定に関する取り組みの実施状況などが優良な中小事業主であると認定を受けました。 山口県内で3社目、下関市内では初となります。全社員で障害者の就労を支援する弊社の組織風土を醸成しながら社会貢献も果たして参ります。
いま旭洋造船がこうして健全に営ませていただき、昨年10月に創立80周年を迎えられたのも、ひとえにご発注いただきました船主様を始め、商談を仲介いただきました商社様やブローカー様などなど関係各社様のご厚情とご努力の賜と、改めまして感謝の気持ちを表させていただきたいと存じます。
本年も気持ちを新たに、私たち一同は、建造、修繕させていただくチャンスをいただいたお客様や様々な関係者の方々への感謝の気持ちをかみしめつつ、地域のため、会社のため、そして自分自身と家族のために、夢と希望と活力をもって、安全第一に「船づくり」を行ってまいります。
今後とも、一層のご愛顧とご鞭撻をお願い申し上げます。
旭洋造船株式会社
代表取締役社長
越智勝彦