NEWS 163 : 5年ぶりの冷凍運搬船
2013年1月17日、約5年ぶりの建造となる久々の超低温冷凍運搬船、280,000cbf S507番船の命名引渡式が行われました。
冷凍運搬船の建造は旭洋造船のお家芸ともいえる技術で、超低温型の標準船型は建造実績を積み重ねてきています。今回の S507番船は、船主殿や監督殿のご要望を反映した上で、この5年でさらに進化したテクノロジーをS507番船にそそぎこみ、仕様を一新。ひとまわり大型・約28万立方フィートの貨物容積を持つ、最新鋭のエコシップとして誕生させました。
まず第一の特徴は、バラストなしで吃水の確保ができるノンバラスト船型であるということです。水生生物や病原体を移動させ生態系や健康に影響を与えるだけでなく、タンク内の錆の発生の原因にもなるバラスト水そのものと決別することで、処理装置の設置や、PSPC規制準拠のバラストタンク塗装などの二次的な対策を一気に不要としました。経済性と環境性を両立させ、船主・造船所双方にもメリットのある設計です。
機関部では、低硫黄燃料油対策を考慮したシステムや完全清水セントラルクーリングシステムを採用し、環境負荷を低減。燃料油容積を犠牲にせず燃料油タンク保護規則への対応を果たしています。また、プロペラ/軸系の設計にあたっては、主機関の低負荷運転を特に考慮。船主殿との協議を踏まえ、使用頻度の高いと予測される負荷域でのねじれ振動対策を入念に行い、省エネ性を高めています。
この他にも、地球環境にやさしいとされる冷媒R404Aを使用した直膨式冷凍装置の採用、機関室モニタリング用の簡易データロガーの設置、-50Cクラスの超低温船としては初の試みとなる貨物艙内のLED照明の使用など、きめの細かいデザインの変更を行いました。
さて命名引渡式には、船主殿である山根産業株式会社代表取締役、瀬野浩之様をはじめとする35名のゲストがお見えになり、この最新鋭船への期待の高さがうかがわれました。ゲストの三菱商事株式会社水産ユニットマネージャー柏木康全様により S507番船は "IBUKI" と命名され、瀬野社長ご令嬢による支綱切断、拍手と紙吹雪、祝砲の中、"IBUKI" は無事に引き渡されました。
この後、船主殿ご手配による入魂式がブリッジでとりおこなわれ、船内見学ののちホテルへ移動、竣工祝賀会となりました。恒例イベントであるホテル前の関門海峡を世界最大の超低温冷凍運搬船 "IBUKI" が通過した際には、ゲストの方々から称賛の声、歓声が相次ぎ、祝宴会は感動の余韻のなかでクライマックスを迎えました。
"IBUKI" の安全無事な航海と活躍、そしてご発注いただきました山根産業株式会社殿の益々のご繁栄を祈念致します。
[2013/02/04]