NEWS 234 : 2018年・新年のごあいさつ
2018年頭にあたり、謹んで新年のご挨拶を申し上げますと共に、本年の抱負を述べさせていただきます。
昨年の世界経済は、各国の中央銀行による金融緩和措置を背景に、米国では旺盛な個人消費と上昇する株価に、欧州ユーロ域内では回復した内需と拡大する輸出に、そして、中国では当局の拡張的な政策に、それぞれ支えられながら、堅調に成長し続けました。
その拡大する世界経済の中、わが国でも、昨年9月に景気拡大の長さが「いざなぎ景気」を超え、戦後2番目の長さとなるなど、経済成長率は世界レベルに比べ低いとはいえ、着実に景気の回復を続けました。
今年は、世界では、景気を引き下げることなく金融緩和措置のソフトランディングが試される時期に、又、我が国では、増大する地政学的リスクと少子高齢化に伴う就労人口の減少といった経済に深く関わる国内外の諸問題と共に、伸び悩む個人消費や設備投資といった経済問題を、安定した政権の下で着実に解決していかなければならない時期になると考えます。
さて、海運界は歴史的と言われる不況からは脱出しつつあるものの、タンカーなど一部の船種ではまだまだ厳しい状態が続いています。コンテナ部門においては日本の3大海運海会社が「ONE」という運航集団を形成したように大手でさえドラスティックな事業再編を推し進め、生き残りに懸命であります。中国やインドなどの消費経済の拡大に伴って海上荷動きが旺盛にならない限り本格的な回復は望めないという声もあり、海運市況の回復が明らかになる時期をはっきりと見通すことができません。
造船業界では、一部の造船所でフェリーやRORO船などの受注を伸ばしたところもありますが、バルカーやタンカーを主に建造する多くの造船所は、受注件数の低下はまだまだ続いており、数少ない新規案件の価格交渉でも厳しい判断を余儀なくされ、工場単位ではそれなりの操業を維持してはいるものの、各社の決算状況をみても明らかな様にまだまだ厳しい経営環境に置かれています。 日本の造船業界にとりましても、一昨年末から続いている円安は採算面での唯一の助けになっているとは言え、海運市況の本格的な回復を感じるまでは正念場は続くであろうと言わねばなりません。
このような状況の下、弊社は、新造船部門におきまして、昨年6隻の船を予定通り建造、引き渡しすることができました。 内訳は海外船主様から発注頂いた3種類のLPG船5隻と国内船主様から発注頂いた 1,100TEU型コンテナ船1隻で、LPG 船は11,000m3と 7,500m3 の加圧型がそれぞれ2隻、久しぶりに建造させていただいたセミレフ型の 7,000m3 LPG船が1隻、そしてコンテナ船はロングセラーの1,096TEU型 であります。どの船も船主様や船級協会様の暖かいご支援とご協力の下により、予定納期通りに引き渡すことができました。
一方、受注面では、先述の海運不況により大変厳しい状況ではありましたが、LPG運搬船、普通低温および超低温冷凍運搬船や内外航のコンテナ船など国内外の船主様より発注を頂きまして、2020年前半までの線表を埋める受注にメドを付けることができました。今年はそれらの船の契約調印に向かって業務を進めると共に、更にその先の商談も交渉を行います。厳しい中で薄日が差し始めたマーケットの下、当社の特徴であるニッチな分野での特殊仕様の船の受注を目指し開拓してまいります。
また、もうひとつの営業主力である修繕部門におきましても、引き続き多くの国内のお客様にご愛顧いただきまして、大型の改造工事などの受注により、売上金額は前年を上回ることができました。
高校でプレゼンテーションを行う若手社員 (右)
今年の最重点項目は、引き続き厳しい環境の下で、やはり受注を着実に積み重ねるということであります。またマーケティング的にはNOx三次規制および新たに2020年より適用が開始となるSOx排出規制に対し、物理的にそして経済的に弊社サイズの船舶に最も適した船型開発を焦眉の課題とし、お客様にご満足頂ける提案をしたいと考えています。
一昨年4月に東京で開かれました Sea Japan 2016でのプレゼンテーション(テーマは「中小造船業界の技術トップランナーを目指して」)に続き、昨年4月にはシンガポールの海事展覧会 Sea Asiaにおきましても営業担当常務が「風に吹かれて」というテーマで空力特性に優れた弊社の特許船型のプレゼンを行うチャンスを得、他社に先駆け高性能な船を開発して一歩先行く当社の姿を国内外のお取引先に示すことができたと共に、旭洋造船の持つ4つの力、「営業力、設計力、工作力、財務力」をアピールすることができました。
そして製造業にとって永遠の課題ではありますが、コスト競争力をより一層強化することであります。 海運マーケットに見合った船価での船の提供は、造船会社の使命でもあり、希求する永遠のテーマです。適正な資材価格の更なる追求を中心に、社内のあらゆる直接間接部門に対し、コスト見直しはもとより一層仕事の生産性を高め無駄の根を取り除いて参ります。
結びといたしまして、今旭洋造船がこうして健全に営ませていただけるのも、ひとえにご発注いただきました船主様を始め、商談を仲介いただきました商社様やブローカー様などなど関係各社様のご厚情とご努力の賜と、改めまして感謝の気持ちを表させていただきたいと存じます。
若々しい声のあふれる活気のある職場を常に標榜し、協力会社を含めた全社員が「チーム旭洋」としてワンチームの一体感を感じながら、将来に向けエンジニアリング能力に長けた設計布陣をもつ小粒でもピリッと辛い造船所を目指してまいります。
本年も気持ちを新たに、私たち一同は、建造、修繕させていただくチャンスをいただいたお客様や様々な関係者の方々への感謝の気持ちをかみしめつつ、地域のため、会社のため、そして自分自身と家族のために、夢と希望と活力をもって、安全第一に「船づくり」を行ってまいります。今後とも、一層のご愛顧とご鞭撻をお願い申し上げます。
旭洋造船株式会社
代表取締役社長
越智勝彦
[2018/01/01]