BREAK006 : イカ巣漁体験記
今日は、普段では出来ない珍しい経験をご紹介したく思います。
例年3月初頭より、下関市近海では甲イカの産卵期を迎え、漁師さん達によるイカ巣漁がいっせいに開始されます。そんな春の穏やかな一日、山口県漁業協同組合長府支店殿のご好意で、筆者はこの下関市長府沖の春の風物詩ともいえるイカ巣漁に同乗させていただきました。
乗せていただいたのは、山口県漁業協同組合長府支店の山口さんご夫妻の漁船、第三春風丸。大変仲の良いご夫婦でいつも一緒に漁に出られるとのことです。まさに文字通り「夫婦船」という感じでした。
イカ巣漁は、下関長府沖合いに1ライン1200mの長さのロープに約60個のイカ巣専用網籠を取り付けて海底に沈め、産卵に来た甲イカを捕獲します。この籠の入り口にはイカが産卵したくなるようにイカ柴という仕掛けを装着します。イカ柴はハギの小枝とネコヤナギの穂をくびったもので、ネコヤナギの穂があたかも卵が付いた状態にイカには見えるようで、イカの産卵意欲を促しおびき寄せるという仕組みです。この漁は6月頃まで続くとのことです。
さて、体験させていただいた日はベタ凪の暖かい日で非常に快適な時間でした。山口さんご夫妻の巧みな操船と漁法でラインの網籠を次々に引き上げて行き、収穫は約300杯、大漁となりました。ご存知のようにイカは上がったときに墨を吐きますので、筆者も相当量のイカ墨シャワーを体験させていただきました。
驚いたことに、時たま、仕掛けの中にはタコもかかっており、聞くと仕掛けに入ったイカを食べに入って出られなくなったものとのことで、同じくタイが入っていることもあるとのことです。
この日のイカ巣漁体験は約3時間位でしたが、まさにあっという間に過ぎた楽しさと感動の時間でした。帰りにはこの日取れた甲イカを大量にお土産にいただき、ただただ感謝のひと言です。山口県漁業協同組合長府支店の皆様、貴重な体験をありがとうございました。
山口県漁業協同組合長府支店では毎週日曜日朝6時から朝市を開催しており、名物関門タコを始め獲れたての新鮮な魚介類、そしてもちろんこの甲イカも格安のお値段で市場に並んでいます。持ち帰ってすぐに食べられるようにさばいてくれるのが嬉しいところ。駐車場、トイレも完備しており、さらにポンポン船という名の食堂では、漁協で上がった新鮮食材が様々な惣菜として並んでおり全て驚きの激安価格で提供されています。この記事を読まれた方、是非一度朝市に行かれてはいかがですか。
[2010/05/13]
Photo & Text by T. Miyoshi except B&W cuttlefish photo © 2006, David Iliff, licensed under Creative Commons Attribution 2.5.