NEWS 112 : 省エネ型自動車運搬船船型を開発しました!!
平成22年1月27日付けの日本経済新聞(第15面)の記事をご覧になった方も多いと思いますが、旭洋造船は本年より新たに 2000台積型の自動車運搬船 (PCC) の建造を開始することになり、本シリーズで初めて採用する風圧抵抗を大幅に減らした画期的な省エネ型デザインの概要を発表しました。
中東石油産出国の不安定な政情並びに中国の石油需要増大に伴う原油価格の高騰と、京都議定書により世界で大きく注目されるようになったCO2排出量規制という2つの将来へ向けての課題、つまり省エネルギーと環境保護という2つの大きなトレンドを感じながら、水線上の形状を工夫することで風圧抵抗を減らし、これまでにない新しい省エネ船型が開発できないだろうかと思い立ったのは2007年の初めです。
研究開発の対象として、あらゆる船舶の中で水線上の風圧抵抗が最も大きいとされ、省エネ船型による風圧力低減効果の大きい自動車運搬船を選択しました。主に船首部の形状を半球の流線形にすることを主眼とした船型開発であったことから、当初より「SSS(Semi Spherical Shape)バウ」という開発コードで研究開発がおこなわれ、最終的に風圧抵抗の大幅な低減に成功。九州大学応用力学研究所における風洞実験において、風圧抵抗は従来船型比で最大50%の低減が可能となることが実証されました。これは、北大西洋における平均海象条件において、年間航海率75%をベースに計算すると、最大年間約800トンの燃料節減に相当、CO2排出量では年間約2500トンの削減を達成できることになります。
本船のオペレーターである日産専用船株式会社様からは、我々の提案が燃料節減のみならず、CO2排出量の大幅削減という環境面での社会的貢献となることもご評価いただき、省エネ船型での傭船を決定していただきました。本船は日産専用船の子会社であるユーロ・マリン・キャリアー(本社オランダ)が欧州近海での運航を予定しているとのことです。欧州近海、特に北海は風が強いと言われている海域であり、我々もそのような海域で最大限の効果を発揮できるよう研究してきましたので、実運航における成果を心待ちにしています。
本船は今年の6月に起工、年末に引き渡し、引き続き同型の第2番船が約3カ月後に竣工する予定です。半球状のその雄姿が建造ドック内に姿を見せ始める9月には私ども旭洋造船の社員全員が自社開発によるこれまで見たこともないような新船型に身震いすることでしょう。
[2010/02/01]